639479

優花里
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2: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:20:35.22 ID:qeHX/Mkuo





~第64回戦車道全国大会:1回戦~




『…黒森峰女学園、フラッグ車走行不能!』

『よって…大洗女子学園の勝利!』


沙織「…や、やったぁ!勝ったよ、みぽりん!」

華「やりましたね、みほさん」

優花里「西住殿ぉ!」

みほ「…うん!みんな、ありがとう!」


ザッ

エリカ「…ハァ。まさか、またあんたたちに負けるなんてね」

みほ「エリカさん」

エリカ「去年、隊長がアンタたちと一騎打ちで負けてから、ずーっとこの大会を待ってたのよ?」

麻子「まさか、1回戦で当たるとは思わなかったがな…」

3: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:21:11.89 ID:qeHX/Mkuo


エリカ「…本当は、ずっと納得してなかった。去年、あんたたちが隊長に勝ったなんて…」

エリカ「でも、もうこれで認めるわ。本当に強かったのね」

みほ「…うん。みんながいてくれたから、私は…」

エリカ「…」

エリカ「…勝ちなさいよ、みほ」

エリカ「初戦で私たちに勝っておいて、優勝以外ありえないんだから」

みほ「…うん!ありがとう、エリカさん!」



~~~



沙織「ねぇねぇ!1回戦突破記念に、何か食べに行かない?」

華「それでしたら、また沙織さんの手料理が食べたいです」

沙織「えー?またー?もー、華ったらぁー」

麻子「それにしても嬉しそうだな」

みほ「ふふ、じゃあ、また私の部屋でいいかな?」

4: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:21:38.89 ID:qeHX/Mkuo

沙織「うん!とりあえず買い出しね!」

優花里「はい!参りましょう!」スッ


ズキッ


優花里「んっ」

みほ「? 優花里さん、どうしたの?」

優花里「あ、いえ。何でもありません」


優花里「(今、左腕に何か違和感が…)」

ブンブン

優花里「(うん、気のせいかな?)」


沙織「ゆかりーん!行くよー!」

優花里「あ、はーい!」

5: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:22:04.89 ID:qeHX/Mkuo


…大洗女子学園の戦車道復活から1年後、第64回戦車道全国大会

西住隊長と澤副隊長の指揮により1回戦を突破し、まずは一歩、二連覇に向けて前進しました

…ですが、1回戦終了後に、私の左腕から感じた違和感…

思えば、これが私の体からの、最初のシグナルだったのかもしれません




Girls und Panzer
 不惜身命の装填手 -秋山 優花里-

6: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:22:41.52 ID:qeHX/Mkuo

優花里「…おはようございます、西住殿っ!」

みほ「あ、優花里さん。おはよう」

優花里「いやぁ、先日はお見事でした!」

優花里「逸見殿の作戦のスキをついて、フラッグ車を挟撃する作戦…惚れ惚れしますぅ!」

みほ「あはは、ありがとう」

優花里「それで、今日の練習は…あれ?」

みほ「?」

優花里「前を歩いてるの、冷泉殿ですかね?」

麻子「」フラフラ

みほ「相変わらずつらそうだね…」

優花里「あ、私が支えますよ。冷泉殿ー!」

麻子「ん…西住さん、秋山さん…おはよう…」

優花里「おはようございますっ」

みほ「おはよう、麻子さん」

優花里「つらそうですねぇ…」

麻子「つらい…眠たい…」

7: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:23:13.23 ID:qeHX/Mkuo


優花里「肩かしますよ、冷泉殿。さぁ」

麻子「ありがたい…」スッ


ズキッ

優花里「んっ…!」


ズルッ
ドテッ

麻子「ふぎゅっ!」ベチャッ

優花里「ああぁ!申し訳ありません!冷泉殿ぉ!」

麻子「いたた…」

麻子「…あー…日陰の地べたが冷たい…気持ち良い…」

みほ「ま、麻子さーん、起きてくださーい」

優花里「(また、妙な痛みが…何だったんでしょうか…)」


8: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:24:14.50 ID:qeHX/Mkuo



~~~~~~~~~~




沙織「それでは、全国大会2回戦突破を記念して…カンパーイ!」

カンパーイ

華「ごめんなさいね、みほさん。また押しかけてしまって…」

みほ「ううん、ありがとう」

麻子「…というか、1回戦の後もやったろ。毎回やるつもりなのか?」

沙織「だって、麻子は嬉しくないの?」

麻子「そりゃあ、私だって嬉しくないわけじゃないが…」

優花里「まぁまぁ。2回戦も勝てたおかげで、こうして皆さんと戦車道が続けられるわけですから」

沙織「…うん、そうだよ。私たち、もう3年生だもんね」

沙織「これが、みんなで戦車に乗れる、最後の大会かもしれないから…」

みほ「…うん」

華「そうですね…」

優花里「武部殿…」

沙織「…あー、ゴメンゴメン!今日はそういうのナシにしよ!ほら、みんな食べて!」

華「沙織さん、お代わりいただけますか?」

沙織「速っ!」

9: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:24:56.11 ID:qeHX/Mkuo



・・・・・・


みほ「みんな、今日はホントにありがとう。凄く楽しかった」

沙織「こっちこそ、毎回みぽりん家にお邪魔しちゃってごめんね」

みほ「ううん。ありがとう、沙織さん」

華「私たちも楽しかったです」

優花里「それでは、私たちはそろそろ帰りましょうか」

華「そうですね」

沙織「それじゃ、みぽりん、またね」

麻子「…」

みほ「…?麻子さん?」

麻子「…秋山さん」

優花里「…?」

麻子「ちょっといいか?」

優花里「はい?」

10: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:25:33.94 ID:qeHX/Mkuo

沙織「え?何々?なんの話?」

麻子「すまん、沙織。ちょっと秋山さんと二人で話したい」

優花里「はぁ…私は、構いませんが…」

麻子「みんなは先に帰っててくれ。大した話じゃない」

みほ「うん。じゃあまた明日」

華「では、私たちは帰りましょうか」

沙織「またね、麻子。ゆかりん」

優花里「あ、はい」


スタスタ


優花里「……え、ええと、冷泉殿?なんのお話しでしょうか?」

麻子「もう、何となく感づいてるとは思うんだが…」

優花里「はい?」

麻子「ちょっと失礼」


ギュッ


優花里「いだだだだだ」

麻子「あ、す、すまん」

11: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:26:20.32 ID:qeHX/Mkuo

優花里「な、なんですかいきなり!」

麻子「いや、ちょっとやりすぎたのは悪かったが…」

優花里「え?」

麻子「…秋山さん、何か隠しているんじゃないか?」

優花里「か、隠す…?一体何のこと…」

麻子「じゃあ直接言うが、その左腕のことだ」

優花里「う…」

麻子「以前、私に肩を貸してくれた時から、様子がおかしい気がしていた」

麻子「装填手で力のある秋山さんが、あの程度でヘタれるわけがないとは思ってな」

麻子「それから、試合中、お昼の時にも、しきりに左腕を気にしているように見えた」

優花里「むむ…」

麻子「故障か」

優花里「…冷泉殿は、ごまかしきれませんでしたか…」

優花里「ええ、1回戦が終わったくらいから、ずっと左肩に痛みがあるんです」

麻子「1回戦…黒森峰の時か」

12: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:26:51.21 ID:qeHX/Mkuo

優花里「2回戦の時も、装填の時に少しだけ痛みはありました」

優花里「今は、何ともないんですが…」

麻子「…このことは、西住さんは?」

優花里「いえ、冷泉殿しか知らないハズです」

麻子「病院には?」

優花里「これで大事になれば、今後の大会に出れなくなってしまうかもしれませんし…」

優花里「それに、痛みと言ってもそこまで深刻ではありませんから」

麻子「…」

優花里「?」

麻子「…隠し通すつもり、なんだな」

優花里「…はい」

麻子「確かにこのことを西住さんが知れば、もう試合に出してくれなくなるだろう」

麻子「しかし、それだと秋山さんの体が…」

優花里「…冷泉殿」

優花里「私も、冷泉殿も、西住殿も、みなさんも、これが最後の戦車道大会なんです」

優花里「…最後まで、私はみんなと一緒にいたい」

優花里「そのためなら、このくらいの痛み、何でもありませんから」

麻子「…」

優花里「…ですから、今日のことは、冷泉殿だけの胸にとどめておいてくれませんか」

麻子「……わかった」

13: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:27:32.53 ID:qeHX/Mkuo



~~~後日:戦車道全国大会準決勝~~~



みほ「…作戦は今説明した通りです」

みほ「いよいよ準決勝ですが、みなさん、楽しんで行きましょう」

みほ「相手は強豪、プラウダ高校ですが、昨年も同じように準決勝で勝利しています」

みほ「数では不利ですが、落ち着いて戦いましょう」

みほ「それではみなさん、各車両を準備してください」


優花里「…ん…」ブンブン

麻子「…秋山さん、大丈夫か?」

優花里「はい、今のところはなんともありません」

麻子「…なら、良いんだが…」

優花里「本当に無理そうなら、ギブアップしますから」

麻子「…」

沙織「? 麻子、ゆかりん?どうしたの?」

麻子「…いや、なんでもない」

優花里「(やっぱり、動かすと少し痛みが…)」

優花里「(あと2試合…あと2試合だけ、持ってください…)」

みほ「…みなさん、用意は良いですか?」

みほ「それでは、作戦開始します。パンツァー・フォー!」


~~~~~~~~~

14: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:28:17.08 ID:qeHX/Mkuo

~~~~~~~~~



みほ「前方に敵フラッグ車!麻子さん!」

麻子「了解。このまま壁際に追い詰める」

みほ「…優花里さん!華さん!」

優花里「…ハイッ!」ガコッ

ズキン

優花里「(くっ…!)」

みほ「今です!」

華「ハイッ!」



ドォーン!

「きゃああ!」


『…プラウダ高校フラッグ車、走行不能!』

『よって、大洗女子学園の勝利!』


沙織「…や、やった!みぽりん!」

華「みほさん!」

みほ「…うん!みんな、ありがとう!」

15: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:29:07.19 ID:qeHX/Mkuo


優花里「やりましたね、西住殿っ!」

優花里「(良かった、今日のところは、何も…)」



ズキッ

優花里「…んっ…!?」



ズキンズキン

優花里「あっ…!!」

みほ「? 優花里さん?」



ぶつっ



優花里「あ、ああああ!!うあああっ!!」ガクッ

華「ゆ、優花里さん!?」

16: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:29:42.94 ID:qeHX/Mkuo

優花里「(ああ、ついに爆発してしまいましたか…!)」

優花里「だ、だいじょ…です…!痛っ…!」ズキズキ

沙織「だ、大丈夫なわけないじゃん!どうしたの!?」

優花里「はぁ、はぁ…」

みほ「…!麻子さん!」

麻子「分かってる!このまま病院まで飛ばすぞ!」

みほ「華さん、優花里さんを支えてあげてください!」

華「は、はい!」

ゴオオッ

梓「隊長!やりまし…あれ?」

典子「隊長?どこに行くんです?」

カエサル「あの慌てよう、只事ではなさそうだが…」


17: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:30:33.40 ID:qeHX/Mkuo


~~~大洗病院~~~




医師「…どうですか、まだ痛みますか?」

優花里「いえ、今は…」

医師「ただの応急処置ですので、まだ動かさないでくださいね」

優花里「はい…」

優花里「…あのぅ、私の腕に、一体何が…」

医師「…肩腱板の断裂、ですね」

優花里「はぁ…肩腱板…ですか…?」

医師「はい。この状態でムリに腕を動かしたりすると、痛みが激しくなるんです」

優花里「…」

医師「戦車で来院のようですが、戦車道を?」

優花里「あ、はい。装填手を…」

医師「高校戦車道の装填手は、特にこうなるケースが多いんです」

医師「短時間のうちに、重たい砲弾を何度も装填することになりますからね」

医師「しかも、それが動き回る戦車の内部です。腕への負担は相当に大きくなります」

優花里「はぁ…」

18: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:31:08.27 ID:qeHX/Mkuo

医師「断裂とは言いますが、今の秋山さんの状態はそれほど深刻ではありません」

医師「ですが、これ以上ムリをすれば、本当に取り返しのつかない事態も考えられます」

優花里「…そ、それで…」

優花里「それで、いつ頃治るんですか…?」

医師「手術なりですぐに治るということはありません」

医師「まずは肩を安静にして、それから必要に応じて手術、リハビリを行うので…」

医師「…そうですね、この状態だと、完治まではおそらく3か月以上は…」

優花里「さ、3か月!?」

医師「それほど時間を置かずに痛みは回復しますが、リハビリ等はそれくらいの期間をかけないと…」

優花里「ちょ、ちょっと待ってください!来週は戦車道大会決勝が…」

医師「しかし…」

優花里「な、なんとかならないんですか…?」

医師「…残念ですが、この症状に特効薬はありません」

医師「ここで無理をすれば、今後の選手生命に影響が考えられます」

優花里「…そんな…」

医師「…ひとまず今日は、こちらの三角巾を使ってください」

医師「手術が必要かどうかは、しばらく後に判断します」

医師「ただ、この様子だと、手術することになるかと思いますが…」

優花里「……」

19: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:31:38.84 ID:qeHX/Mkuo

~~~~~~




沙織「…あ、ゆかりん!」

優花里「みなさん…」

みほ「優花里さん!大丈夫!?」

優花里「あ、はい…」

優花里「すみません、ご迷惑おかけして…」

華「いえ、無事なら良いのですよ」

みほ「ごめんね、私、全然気づかなくて、それで」グスッ

優花里「わぁわぁ!泣かないでください!西住殿!」

優花里「私が隠していたのが悪いんですから」

優花里「こちらこそ、心配をかけてしまって…」

みほ「ううん、いいの。ごめんね…」

華「優花里さん、その三角巾は…」

優花里「いえ、骨折とかではないので」

20: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:32:15.05 ID:qeHX/Mkuo

沙織「それで、どうだって?」

優花里「…」

みほ「…優花里さん?」

優花里「(…ここで、ただ一時的なものだと言えば、決勝でも西住殿と戦えます)」

優花里「(私の体はどうなっても構いません)」

優花里「(ですが西住殿に嘘をつくというのは…いや、でも…)」

麻子「…わかった」

優花里「冷泉殿?」

麻子「医者にどういわれたのかはわからないが、来週までの短期間で治るとも思えない」

麻子「それに、いつまた状態が悪くなるかもわからない」

麻子「そんな爆弾を抱えた人間を、メンバーとして入れるわけにもいかない」

華「麻子さん…?」

麻子「…足手まといになる。決勝は私たち4人で十分だ」

優花里「っ…!」

みほ「ま、麻子さん…」

優花里「…そう、ですよね…わかりました…」


スタスタ

21: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:33:03.03 ID:qeHX/Mkuo

沙織「…麻子ぉ、もうちょっとやり方ないの?」

麻子「むぅ…」

みほ「麻子さん、もしかして前からわかってて…」

麻子「…すまない、西住さん。本当は前から分かっていたんだ」

麻子「だが、秋山さんに口止めされていた」

麻子「秋山さんの状態が知られれば、西住さんはもう試合に出してくれないと思っていたんだろう」

みほ「…確かに、そうだけど…」

麻子「…だが、私もこれ以上看過することはできない」

麻子「乱暴な言い方になってしまったのは、決勝が終わったら謝っておく」

沙織「その時は私も一緒に行くからね、麻子」

麻子「ん…」

華「…しかし、どうしましょう?決勝で装填手不在、というのは…」

みほ「私が車長と兼任するしかないかな…」

華「優花里さん、悔しいでしょうね」

沙織「うん…」

みほ「…勝とう、決勝」

みほ「せめて、優勝旗を優花里さんに見せてあげよう」

沙織「…うん、そうだね。そうだよ!そうでなきゃ!」

麻子「秋山さんの分まで、頑張らないとな」

華「ええ、そのつもりです」

22: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/26(日) 21:33:31.88 ID:qeHX/Mkuo
~~~~~~~~



スタスタ

優花里「(冷泉殿が、私のためを思って言ってくれてることはわかります)」

優花里「(西住殿や皆さんに、これ以上心配も迷惑もかけられません)」

優花里「(だから、ああやって突き放すような言い方をしてくれたんですよね)」

優花里「(でも…)」

優花里「…グスッ…」

優花里「(次が、最期の試合なのに…)」

優花里「(次が、西住殿やみんなと戦える、最期の試合になるかもしれないのに…)」

優花里「なんで、なんでこんな時に…」

優花里「うぅっ…!うえぇ…!」ボロボロ

32: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:07:41.59 ID:+C+rBIbqo



~~~全国大会決勝~~~




・・・


『一同、礼!』

「よろしくお願いします!」


みほ「…ふぅ…」


ザッ

アリサ「…久しぶりね、大洗女子」

みほ「…アリサさん…」

アリサ「大学選抜戦以来ね、西住さん」

みほ「やっぱり、アリサさんが隊長になったんですね」

アリサ「まぁね。去年のリベンジ、させてもらうわよ」

みほ「私たちも、負けるつもりはありませんから」

アリサ「…言うようになったわね、あんたも」

アリサ「…オッドボールのことは聞いたわ」

みほ「え?」

アリサ「残念だけど、こっちも手を抜く気はないわよ」

アリサ「無線傍受なんてケチなことはしないけど、やるからには本気にならせてもらうわ」

みほ「…はい、受けて立ちます」

33: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:08:21.03 ID:+C+rBIbqo


~~~観客席~~~


優花里「ふぅ…」

優花里「(決勝戦、大洗vsサンダース…)」

優花里「(大洗の2連覇をかけた決勝なのに、こうして見ていることしかできないなんて)」

優花里「(本来なら、私があそこに…)」


「…隣、いいかい?」

優花里「あ、はい、どうぞ…え?」


ナオミ「久しぶりね、オッドボール」

ケイ「ハーイ!」

優花里「ケイ殿、ナオミ殿…どうして?」

ケイ「どうしてって、そりゃあもちろん、可愛い後輩の活躍を見るためよ?」

ナオミ「悪いね、今年こそ優勝させてもらうよ」

優花里「はは…」

34: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:09:25.78 ID:+C+rBIbqo

~~~~~~


みほ「…では、カバさんはこちらに…」

沙織「…!みぽりん!左!」

ブォォン

アリサ「貰ったぁ!」

みほ「えぁ!?」

華「みほさん!装填を!」

みほ「あ、はい…!」

麻子「…!ダメだ、間に合わない。いったん離れるぞ」


ゴォォッ

ドォォン


みほ「きゃあ!」

アリサ「ち、やっぱり早いわね…!」

典子「隊長!すみません!バックアタックされてます!指示をください!」

みほ「え、えっと…!」



35: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:10:04.34 ID:+C+rBIbqo

ナオミ「…ずいぶんモタついてるな」

ケイ「まーねー。装填手兼任って、思ったより難しいのよ」

ナオミ「ケイ、装填兼任なんてしたことあったか?」

ケイ「1回だけね。付け焼刃だと頭か腕のどっちかが回らないもんよ」

ケイ「ミホは隊長だし、他の車両の動きも把握してないといけないしね」

優花里「…」

優花里「(やっぱり、私が抜けてるせいで、西住殿…!)」


梓「ごめんなさい!ウサギチームやられました!」

みほ「わ、わかりました!」


優花里「う…!」

36: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:10:44.72 ID:+C+rBIbqo

アリサ「そっちいいわね!1両こっちに回って!フラッグのあんこうを狙うわ!」


優花里「っ…!」

優花里「(も、もう我慢の限界です…!)」

ガタタッ


ケイ「…待ちなさい、ユカリ」

優花里「…ケイ殿…」

ナオミ「どこに行くつもり?こんないい試合を最後まで見ないの?」

優花里「え…と、お、お花を摘みに…」

ケイ「タンクジャケットを持って?」

優花里「そ、それは…」

ケイ「…ハァ、ユカリ、いい?」

ケイ「私がここに来たのは、後輩の応援もあるけど、ミホに頼まれたのよ」

優花里「西住殿が?」

ケイ「ユカリが暴走しないように見張ってるようにね」

優花里「…」

37: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:11:28.30 ID:+C+rBIbqo

ケイ「…ユカリ。ミホはあなたのことを思って…」

優花里「…わかってますよ。それは…」

優花里「これは、私のワガママなんです」

ナオミ「大洗の忠犬と聞いていたけど、ずいぶん聞き分けが悪いのね」

ケイ「…あなたのその腕、これ以上ムチャをすれば、それこそ二度と戦車道ができなくなるのよ?」

ケイ「一生、今日のことを後悔することになっても…」

優花里「…私の腕は、千切れても構いません」

優花里「…でも、西住殿が負けるのを、苦しんでいるのを眺めているだけなんてできないんです」

優花里「それこそ、一生後悔することになります」

優花里「ケイ殿。私に、後悔をさせないでください」

ケイ「…」

ナオミ「…」

ケイ「…ハァ…大洗の子は、どうしてこう頑固なのかしらね」

優花里「…」

ケイ「…わかったわ」

ケイ「近くまでバイクで送ってあげる。着替えてらっしゃい」

優花里「…っ…!ありがとうございます、ケイ殿!」

タッタッタッ…

38: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:12:20.99 ID:+C+rBIbqo


ナオミ「…いいの?これで何かあったら、ミホに一生恨まれるぞ?」

ケイ「ここで止めたら、ユカリに恨まれるだけよ」

ナオミ「それもそうだな」

ケイ「…こうなったらもう、無事を祈るしかないわね」

ケイ「ナオミ、アレの準備しておいて」

ナオミ「イエス、マム」

ケイ「…フフ、そう言われるのもなんだか懐かしいわ」




~~~~~~

39: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:13:18.90 ID:+C+rBIbqo

~~~~~~


キキッ

麻子「とりあえず、一度距離を離したが…」

華「囲まれていますね…しかし、幸いにも気づかれてはいないようです」

みほ「正面に1両、後ろに1両…どちらも背中を向けてて、こっちには気づいてないけど…」

沙織「また絶妙なところに落ち着いたね…」

麻子「どうする?」

みほ「…」

みほ「(正面を落として、そのまま旋回。1発目の発砲音でバレるから、即座に振り返ってすぐ撃てれば…)」

みほ「(華さんと麻子さんの技術があれば、たぶん問題ない。けど、私の装填がうまくいくか…)」


ザッザッザッ…

麻子「…ん…?」

沙織「麻子?」

麻子「…あれ、秋山さんじゃないか…?」

華「えっ?」


ザッ…

優花里「ハァ、ハァ…に、西住殿…!」

みほ「優花里さん…!」

40: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:14:03.07 ID:+C+rBIbqo

沙織「ゆ、ゆかりん!?こんなところにいたら危ないよ!早く戻っ…」

優花里「西住殿」

優花里「…お願いします。Ⅳ号の装填、私に任せてくれませんか」

みほ「…!」

沙織「な…」

沙織「な、何言ってんの!ゆかりん、自分の腕のことわかってるの!?」

優花里「もちろん、承知しています」

優花里「西住殿のために、この腕を、この命を燃やす覚悟はできています」

優花里「お願いします。西住殿」

みほ「…」

沙織「みぽりん…?」

みほ「優花里さん…気持ちは嬉しいけど、どうしてそこまで…」

沙織「そ、そうだよ!確かに優勝したいけど、それより…」

優花里「…これが、西住殿と戦える、最期の試合かもしれませんから」

優花里「最後の瞬間まで、西住殿の右腕でいさせてください」

みほ「…っ…!」

華「み、みほさん…」

41: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:14:36.05 ID:+C+rBIbqo

みほ「優花里さん」

みほ「…お願い、できますか?」

優花里「…!は、はいっ!」

沙織「み、みぽりん!なんでっ…!」

優花里「武部殿、いいんですよ」

優花里「ありがとうございます、西住殿」

みほ「…ごめんね、優花里さん…」

優花里「(西住殿は、優しい人です)」

優花里「(誰よりも友達思いで、だから、友達が傷つくのを見ることは耐えられないハズなんです)」

優花里「(そんな西住殿が、私のワガママを聞いて、私の痛みに目を瞑ってくれました)」

優花里「(私に帰れと命令するより、自分のために尽くせと命令することが、どれだけ西住殿にとって辛いことか)」

優花里「…謝るのは私の方ですよ。西住殿」


麻子「(何故…いや、やはりと言うべきか)」

麻子「(…すまない、秋山さん)」

42: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:15:17.01 ID:+C+rBIbqo

優花里「行きますっ」

ガコッ

ズキン

優花里「…ぐっ…!」

みほ「優花里さ…!」

みほ「…っ…!」

みほ「…で、では、作戦通りに行きます。麻子さん、華さん」

優花里「(西住殿が今何を言いかけたか、私にもわかります)」

優花里「(ここまで来たら、絶対に泣き言は言えません)」

華「…行きます。麻子さん、いいですか?」

麻子「いつでもいけるぞ」

華「では…!」


ドォォン!!

<きゃああ!

シュポッ


沙織「やった!」


『な、なんだ!?』
『後ろだ!Ⅳ号がいるぞ!』

43: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:15:57.56 ID:+C+rBIbqo

麻子「旋回する」ゴォォッ

優花里「次弾、いきますっ!」ガコッ

ズキン

優花里「(痛くない、痛くないっ…!)」

みほ「華さん!今!」

華「はいっ!!」

ドォォン
シュポッ


『Damn!!』


沙織「やった!」

みほ「…!まだです!正面!フラッグ車!」

沙織「え?」


アリサ「こんなところにいたのね…!今回は勝たせてもらうわよ!」

麻子「…どうする?離れるか?」

みほ「ここは…」チラッ

優花里「…」コクリ

みほ「いえ、ここで決着をつけます!」

44: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:16:39.10 ID:+C+rBIbqo

優花里「はいっ!」ガコッ

優花里「(大丈夫…大丈夫…!)」


みほ「撃て!」
アリサ「Fire!!」


ドドオン!!


みほ「…っ、躱された…!」

アリサ「やるわね、Ⅳ号…!こうなったらここで決着付けるわよ!」

優花里「次いきます!」ガコッ


ドドォン!!


優花里「(…不思議な感覚です…)」

優花里「(先ほどから、あまり痛みを感じません)」


ガコッ
ドォォン!!


アリサ「さっきからちょこまかと…!」

みほ「相手も速い…華さん、次は停止して狙います!」

華「わかりました!」


優花里「(ああ、このまま時間が止まってくれればいいのに…)」



ガコンッ

ぶづんっ


優花里「(――あっ)」

45: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:17:32.68 ID:+C+rBIbqo

みほ「今!撃てーっ!!」

華「ハイッ!!」

ドォォン!!

アリサ「きゃあああ!!」


シュポッ


『…サンダース大付属、フラッグ車走行不能!』

『よって、大洗女子学園の勝利!!』



麻子「やった…のか…?」

華「みたい、ですね…」


みほ「…!優花里さんっ!」

優花里「…あっ…!うっ、ぐっ…!!…あ…!!」

みほ「優花里さん!!優花里さんっ!!」ポロポロ

沙織「ゆかりんっ!!」

華「優花里さん!」

麻子「秋山さん!」

優花里「(…あぁ、西住殿を泣かせてしまいました)」

優花里「(さっきから、肩のあたりから激しい痛みを感じます)」

優花里「(本当に千切れているのではないでしょうか)」

みほ「ごめんなさいっ…!私、私が…!」ポロポロ

優花里「(…泣かないでください、西住殿)」

優花里「(これは、私が望んだことなんですから)」

46: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:18:27.85 ID:+C+rBIbqo

沙織「麻子っ!」

麻子「…ダメだ、ここからだと病院は相当遠い。救急車を…!」



ババババババ…!



みほ「え…?」

沙織「ヘリコプター…?」

バッ

ケイ「ユカリ!!乗って!!」

みほ「ケイさん…!」

ナオミ「全く、世話の焼けるスパイガールね」

華「あ…優花里さん、動けますか?」

沙織「ゆかりん、もうひと頑張りだから!」

麻子「秋山さん!捕まれ!」

優花里「(…私なんかのために、こんなに…)」

優花里「(ああ…私は、なんて幸せ者なんでしょうか)」




~~~~~~

47: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:19:24.32 ID:+C+rBIbqo

・・・・・・


・・・


優花里「…ん…」

優花里「……!」ガバッ

優花里「あっ、いてて…」

優花里「あれ、ここは…?病院…?」

優花里「…」

優花里「(…そうか、試合が終わってすぐ、病院に運ばれて…)」

優花里「(…この左手の包帯は…ああ、夢じゃなかったんですね…)」


ガララッ


優花里「…ん?」

沙織「…ゆかりん、起き…!みんな!ゆかりん起きてるよ!ほら!」

ドタドタッ

みほ「優花里さんっ!!」

麻子「秋山さん!」

華「優花里さん!」

48: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:20:15.14 ID:+C+rBIbqo

優花里「わあぁ!」

バッ

みほ「ごめんね、優花里さん。ごめんね。ごめんね…」グスッ

優花里「…私の方こそ、申し訳ありません。西住殿」

麻子「…いや…私こそ、秋山さんに酷いことを言って…」

沙織「…もー、私ら蚊帳の外じゃん!」

華「ふふ、良いじゃないですか」

優花里「…あ…そ、それで、検査の方は…」

みほ「…うん」

麻子「秋山さん…」

優花里「覚悟はできてますから」

沙織「…ゆかりん…」

華「みほさん」

みほ「ふぇ!?わ、私!?」

華「ええ。ここは隊長さんから」

優花里「西住殿…?」

49: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:21:09.55 ID:+C+rBIbqo

みほ「え、えーと、私たちはもう先生から聞いてるんだけど…」

優花里「…」

みほ「…全治3カ月が、6カ月になったって…」

優花里「そ、それじゃあ…!」

麻子「どうやら、最悪の事態にはならなかったようだ。しっかりリハビリすれば、また戦車道に復帰できると聞いた」

優花里「…っ!」

沙織「良かったじゃん、ゆかりん!私たち、待ってるからね!」

華「ふふ、先生は怒っていましたけどね」

麻子「これだけ無茶をすれば、当然ではあるけどな」

優花里「よかったぁ…」

麻子「秋山さん…」

優花里「…西住殿…本当に、ありがとうございます。私のワガママを聞いてもらって…」

みほ「ううん。私こそ、無理させちゃったよね…」

優花里「いいんですよ。西住殿」

華「…優花里さんも休みたいでしょうし、そろそろお暇しましょうか」

沙織「ん、そうだね。ゆかりん、ゆっくり休んでね」

麻子「またな、秋山さん」

優花里「ええ、また」

みほ「…うん。それじゃあね、優花里さん」


バタン…

50: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:21:46.48 ID:+C+rBIbqo

優花里「(…これで、私たちの最後の戦車道大会は終わってしまいました)」

優花里「(最後の大会、最後まで皆さんと一緒に戦えて、後悔はありません)」

優花里「(…でも…それでも、できることなら、また皆さんと一緒に…)」

優花里「…いつか、また…」

優花里「…」



・・・


・・






51: ◆o8JgrxS0gg 2017/03/29(水) 23:22:34.65 ID:+C+rBIbqo






~~~8年後~~~






『…ただいまより、プロ戦車道セントラルリーグ、大洗ファイターズ対、川崎イーグルスの試合を開始します』




「…みなさん、おはようございます」

「今日の相手は川崎イーグルスさんです」

「昨シーズンは少し苦手な相手でしたが、今年は勝ち越せています」

「今日勝てばプレーオフ、日本一がさらに近づきます」

「勝つことも大事ですが、みなさん落ち着いて、楽しく、ケガのないように戦いましょう」

「それでは、作戦開始します。パンツァー・フォー!」




「…行こう、優花里さん」

「…ハイ!西住殿っ!」



 - 完 -