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貴音
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1: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:43:22.17 ID:r0Si7uiZ0
『うっうー!うっうー!』


仕事終わりの帰途を千早ちゃんと取り留めのない会話で埋めていた時、携帯の着信音が耳朶に触れた。


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2: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:44:12.13 ID:r0Si7uiZ0
千早「携帯のバイブがなっているわね。春香のかしら」

春香「千早ちゃんさ、いつもバイブと言い張るけど、明らかにこれやよいの声だよね。絶対おかしいよ」

3: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:44:48.21 ID:r0Si7uiZ0
千早「え、高槻さんの声に聞こえたかしら?やったわ声帯模写成功ね……は!いや、これはバイブよ」

春香「いやいや、もう取り消し不可能なとこまで言っちゃってるから!私、とことん引いてるからね!」

千早「……春香が何をいっているのかわからないわ」

4: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:45:20.82 ID:r0Si7uiZ0
私の何度目かの指摘を千早ちゃんは馬耳東風に聞き流し、メールの確認を行っている。

本当にわからないという顔をしていた。

次の現場でもスタッフのドン引きした顔を見ることになりそうだ。

5: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:45:52.08 ID:r0Si7uiZ0
春香「誰からのメール?貴音さんかな?」

千早「え、どうしてわかるの!?」

春香「メンタリズムですよ。メンタリズム!」

6: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:46:30.20 ID:r0Si7uiZ0
千早「メンタリズム?春香はそんなの使えないでしょ?」

春香「はは、まあ私と千早ちゃんは親友だからね。勘でわかっちゃうんだよ」

千早「親友なら……しょうがないわね//」

7: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:47:00.80 ID:r0Si7uiZ0
実は相手がわかったのには理由がある。

8: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:47:30.34 ID:r0Si7uiZ0
千早ちゃんがメールをするのは765プロの人だけだ。

以前こんなやり取りを見たことがある

9: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:47:59.97 ID:r0Si7uiZ0
私と貴音さんが事務所への階段を上ると、扉の向こう中から奇妙な声が聞こえてきた。

10: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:48:26.69 ID:r0Si7uiZ0
千早「うっうー!響さん、楽しそうですねー!何してるんですかぁ?」

11: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:48:57.75 ID:r0Si7uiZ0
響「お!千早、やよいの物真似か?全然似てないな!」

千早「くっ!」

12: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:49:23.99 ID:r0Si7uiZ0
私たちはドアの外で聞き耳を立てることにした。

13: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:49:52.44 ID:r0Si7uiZ0
響「これはな、沖縄の友達とメールしてたんだよ。何か面白いことがあるとみんなで共有するようにしてるんだ」

千早「それは楽しそうね。私もやってみたいわ」

響「うんうん。やってみるといいさー」

14: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:50:20.75 ID:r0Si7uiZ0
千早「それじゃあ、ちょっと私に我那覇さんの携帯を貸してくれないかしら?」

15: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:50:48.46 ID:r0Si7uiZ0
響「ああ、いいぞ……って、え?」

16: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:51:16.30 ID:r0Si7uiZ0
千早「良いネタがあるのよ。今度出演するドラマの脚本の話なんだけど」

響「やめろ!自分の携帯で機密漏えいするつもりか!」

17: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:51:42.90 ID:r0Si7uiZ0
千早「冗談よ」

響「……前、貴音とも同じやりとりをして、自分人間不信になりかけてるぞ」

18: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:52:13.69 ID:r0Si7uiZ0
春香「え、貴音さんも響ちゃんの携帯で何かやろうとしたんですか?」

貴音「響も春香も誤解をしています!私はただ、響の携帯でねっとしょっぴんぐに挑戦しようとしただけなのです!

19: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:52:40.36 ID:r0Si7uiZ0
春香「誤解もなにも真っ黒じゃないですか。銀色の女王なのに真っ黒ですよ、真っ黒!」

貴音「では次から漆黒の女王と呼んでください」

春香「やめてください、神崎蘭子ちゃんじゃないんですから!」

20: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:53:11.70 ID:r0Si7uiZ0
響「あのな、千早、こういうのは自分の友達とするから楽しいんだよ。千早は千早の友達とやってみたらきっとわかるって」

21: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:53:38.54 ID:r0Si7uiZ0
千早「自分の友達と……ごめんなさい我那覇さん」

22: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:54:05.00 ID:r0Si7uiZ0
響「どうしてあやまるんだ?」

23: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:54:30.17 ID:r0Si7uiZ0
千早「私、765プロ以外に友達がいないのよ。」

響「……」

24: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:54:59.52 ID:r0Si7uiZ0
千早「近所でも、学校でも、私は昔から自分の殻に閉じこもってきたから。友達を作る機会なんて今までいくらでもあったかもしれないのにそのほとんどを無駄にしてきたの。これからだってきっと――」

25: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:55:29.09 ID:r0Si7uiZ0
響「以前現場でさ、スタッフの人に聞かれたんだ」

26: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:55:57.46 ID:r0Si7uiZ0
千早「……」

響「最近千早がとても明るくなったけど何かあったのかって」

27: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:56:25.37 ID:r0Si7uiZ0
千早「それは、皆が私を変えてくれたからで」

響「皆も同じことを聞かれるみたいなんだって。そして皆同じことを答えるんだ」

28: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:57:01.59 ID:r0Si7uiZ0
千早「……」

29: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:57:30.00 ID:r0Si7uiZ0
響「千早が変わろうと努力してるからだって。」

30: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:57:58.93 ID:r0Si7uiZ0
千早「努力……」

響「そうだ。千早はこれから自分の力で沢山の友達を作れると思うぞ。だから心配する必要なんてない。それに楽しい話なら自分たちとすればいいんだよ」

31: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:58:25.32 ID:r0Si7uiZ0
千早「でも、我那覇さんにはメールの相手が」

響「自分、いつも思うんだ。メールじゃなくて直接会って、顔を見て話したいって。だって、楽しい話をしてるんだから」

32: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:58:52.05 ID:r0Si7uiZ0
千早「我那覇さん……」

響「だからいっしょに喋ろう、そのほうがよく伝わるさー。自分千早の楽しい話を聞きたいぞ」

33: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 22:59:19.09 ID:r0Si7uiZ0
千早「ありがとう、我那覇さん」

響「うん」

34: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:00:04.35 ID:r0Si7uiZ0
千早「……それじゃあ話すわね。なんだか緊張するわ」

響「うんうん」

35: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:00:30.45 ID:r0Si7uiZ0
千早「でも私、良いネタがあるのよ。」

響「うんうん……ん?」

36: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:00:56.42 ID:r0Si7uiZ0
千早「今度出演するドラマの脚本の話なんだけど」

響「まずはそこから離れろ馬鹿―!!」

37: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:01:29.54 ID:r0Si7uiZ0
春香「響ちゃん、とってもいい子ですね」


貴音「ふふ、そうでしょう」


春香「でも千早ちゃんだって負けてませんからね!」


貴音「わかっていますよ春香」

38: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:01:57.28 ID:r0Si7uiZ0
千早ちゃんがメールをするのは765プロの人だけだ。

39: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:02:36.54 ID:r0Si7uiZ0
千早ちゃんはメールを読んだ後、わからないという表情をしていた。

765プロの中でそんな解読不能のメールを送ってくる筆頭は、貴音さんなのだ。

亜美真美も難解だが、解読の余地はある。

しかし貴音さんにはそれがない。

40: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:03:13.28 ID:r0Si7uiZ0
春香「それでなんて書いてあったの?」

41: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:03:44.81 ID:r0Si7uiZ0
千早「一言だけ『らぁめん』と」



春香「貴音さんらしいワードだね」

42: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:04:20.30 ID:r0Si7uiZ0
『うっうー!うっうー!』

43: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:04:48.75 ID:r0Si7uiZ0
千早「またバイブが鳴っているわ」


春香「もうそれでいいよ。で、誰から?」

44: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:05:26.65 ID:r0Si7uiZ0
千早「四条さんね。えーと、


『先ほどのメールを見て、あなたはらぁめんを食べたくなってはないかとお見受けします』


とあるわ」

45: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:06:12.31 ID:r0Si7uiZ0
春香「確かに食べたくなってるかも」
千早「確かに食べたくなってはないわね」


春香・千早「「え?」」

46: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:06:39.28 ID:r0Si7uiZ0
『うっうー!うっうー!』

47: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:07:08.54 ID:r0Si7uiZ0
2人してきょとんとした顔をしていると再び着信音が鳴り響いた。

48: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:07:41.25 ID:r0Si7uiZ0
千早「……四条さんからだわ。えーと


『これが麺たりずむです。らぁめんだけに』


49: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:08:09.42 ID:r0Si7uiZ0
春香「いや、これは……」


文面上どちらの意味にもとれる。貴音さんの勝ち誇った顔が頭に浮かんだ。

50: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:08:47.52 ID:r0Si7uiZ0
千早「


『追伸。もし当たったなら罰として今から事務所に来て下さい。今日あった楽しい話をしたいのです。響もおりますよ』


ですって」

51: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:09:16.88 ID:r0Si7uiZ0
春香「どうする?千早ちゃん?」


私は返答が決まりきった質問をする

52: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:09:46.14 ID:r0Si7uiZ0
千早「ふふっ、すっかりしてやられたわね!行きましょう、私たちの事務所に」

53: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:10:16.02 ID:r0Si7uiZ0
春香「……そうだね!行こうか、事務所に」


千早「ええ!」

54: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:10:51.37 ID:r0Si7uiZ0
千早ちゃんがメールをするのは765プロの人だけだ。

55: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:11:19.91 ID:r0Si7uiZ0
でも千早ちゃんの楽しそうな横顔を見ると、私も楽しくなる。

56: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:12:13.78 ID:r0Si7uiZ0
事務所への道のりを私たちは取り留めのない会話で埋める。

57: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:12:50.67 ID:r0Si7uiZ0
千早「そういえば春香、実は私もメンタリズムを使えるのよ」


春香「え、そうなの?」

58: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:13:20.12 ID:r0Si7uiZ0
千早「メンタリズムといえば心理学よね、心理学といえばユング。ユングといえば?」

59: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:13:47.74 ID:r0Si7uiZ0
春香「ユングといえば……コンプレックス?」

60: ◆SU.cErYd62 2017/01/01(日) 23:14:59.63 ID:r0Si7uiZ0
千早「今あなたの頭の中でBEMYBABYが流れているでしょう。これがメンタリズムです」



そこには貴音さんに勝るとも劣らぬ、勝ち誇った千早ちゃんの顔があった。(完)