_SL160_
紬「美少女澪ちゃんと私」


2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:44:59.52 ID:AyBwnMj+0
ほうかご!

ガチャ

澪「お疲れ~みんn」

やいのやいの。
軽音部の皆に向けた澪の挨拶は、喧騒に押しつぶされた。

唯「ダメだよ~、この子は私に食べられたがってるよ。ケーキの声が聞こえるよ~」

律「適当なコト抜かすな!私が一番先に見つけたんだからな。そのケーキは私の!」

唯「りっちゃん隊員!君には聞こえないのかね。私に食べてほしがってるというこの純粋なケーキの声が(キリッ)」

律「上官、お言葉ですがケーキは喋らないし、何より第一発見者を最優先するべきであると思います(キリッ)って乗せられてる場合じゃね~。とにかく、そのケーキは私のだ!」

紬「まぁまぁ、ここは公平にじゃんけんで決めるってことでどう?唯ちゃん、律ちゃん」

唯&律「(ギロッ)じゃ、じゃんけんが公平…?それは本心で言ってるのか(な)、ムギ(ちゃん)?」

紬「い、いや、取り合いになったときはじゃんけんで決めるのが普通なんじゃないかなぁ、て…」

澪「やれやれ、なんの騒ぎだ?」




3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:46:02.05 ID:AyBwnMj+0
梓「澪先輩!お疲れ様です。ムギ先輩が持ってきたケーキに苺が一個多く乗ってるのがあって、それを唯先輩と律先輩が取り合ってるんです」

澪「なんだ、ムギの言うとおりじゃんけんで決めればいいじゃないか」

律「おぉロミオ!最初にこのケーキを見つけたのは私なのよ。あなたまでそのような世迷言を…」

澪「うわ、抱きついてくるな、しかもロミオネタは封印だと言ったはずだぞ!」

唯「澪ちゃ~ん、私が大のケーキ好きなの知ってるよね?一個苺が多いケーキ、もらっていいよね?(ぐす)」

澪「唯は泣きついてくるな」

紬「(むぅっ)じゃあこうしましょう。苺の一個多いこのケーキは後輩の梓ちゃんにあげる!喧嘩してる子たちに食べる権利はありません!」

梓「え、別にいいですよ私…」

澪「それでいいだろ、大人げない…」




5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:47:27.78 ID:AyBwnMj+0
律「梓、ここはいっつもとってもお世話になってる田井中部長に譲ってくれるよな?な?」

唯「あずにゃん~せめて苺だけでもぉぉぉ」

梓「えぇい、私は関係ありませんから、いりません!二人で決めて下さいよ!そして早く練習です!」

澪「… …(はぁ)」

れんしゅうご!

唯「いちご~いちご~(ぐったり)」

梓「まだ根に持ってるんですか?唯先輩。気持ちを早く切り替えないとダメですよ」

律「そうだ、次は譲ってやるから、な?」

唯「えぇ本当?やった~りっちゃん優しい♪」

片付けを終える部員たち。

そして、

唯「じゃ、お先に~。お疲れ~♪」

梓「私も帰ります!お疲れ様でした!」




6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:48:41.76 ID:AyBwnMj+0
澪「で、ケーキは結局、最初に発見した律が食べたんだな」

紬「一番初めに見つけた子にあげるのが公平かな、て思って。私が強引に決めちゃったんだけどね」

澪「いいんじゃないか?毎回ケーキを持ってくるのはムギなんだし」

律「いけね!現代文の宿題あるのに教科書持ち出すの忘れてた…教室まで取りに行ってくる。待っててな、澪」

澪「あぁ、慌てるんじゃないぞ」

音楽準備室は、とたんに静かになった。

澪「ふぅ、騒がしいメンツが多くて落ち着かないな、相変わらず」

紬「あら、でもそれが軽音部の良さじゃないかしら?私はとっても楽しいわよ」

澪「もっと腰を据えて活動したいって気持ちが強いよ、私個人としてはね」

澪は、彼女にしては珍しいはにかみ笑顔を紬に向けた。

澪「ムギと二人きり…い、いや、そうだな、梓も含めて三人でなら、落ち着いて練習できそうだな」

紬「ふふっ、それもいいわね」

紬はいつもの彼女らしく、にっこりと笑った。

とても包容力のある笑顔だった。




7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:50:49.71 ID:AyBwnMj+0
律「はぁ持ってきた~、澪~、帰るぞ」

澪「はいはい」

みおのへや!

耳元に当てたヘッドフォンに、意識を集中している。
お気に入りのロックナンバーを聞きながら、澪はさっさと現代文の宿題を終えた。
小テストと銘打ってはいるが、なんて事はない難易度と分量だった。
特にすることもなく、眠気が徐々に彼女の脳裏を覆い始める。

自然に、今日一日のことがフラッシュバックされ始める。
紬と二人だけになって話していたときのこと。
思えば、二人きりになって話したのは初めてかもしれない。
あいつとだと、話していてもノイズが入らなくて落ち着くな。
がちゃがちゃした感じがないというか。
ただ、「二人きり」というのがどこか照れ臭くて、あのときの会話では梓も入れてしまったが…
思えば、いつも騒動を起こす律、唯に比べて、紬はいつも客観的で、仲介役に回ったりしていることが多い。
私はいつも静観している(または振り回されている)が…
ムギと一緒なら静かに活動できるかもしれないな。
とにかく、あいつは落ち着いていていい奴だよな。




8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:51:52.69 ID:AyBwnMj+0
つぎのひ!

その日の昼休み、いつも通り四人で昼食を食べていた。

唯「りっちゃん~その卵焼き美味しそう~一個ちょうだ~い」

律「何を突然、私の貴重な蛋白源だぞ」

唯「だってぇ昨日のケーキのことがあるじゃん?これでおあいこにしてあげるから~。ダイエットにもなるよ?」

律「だめだめ、ケーキと弁当は別物!」

紬「そうよ唯ちゃん、昨日と約束が変わってるじゃない?」

澪「… …(はぁ)」

唯&律「おっと、ちょっとお手洗い行ってきま~す」

また紬と二人きりになる。

澪「なぁムギ…あの二人、いくらなんでも騒がしすぎると思わないか」

紬「くすくす、活気があっていいじゃない」




9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:52:37.51 ID:AyBwnMj+0
紬は、食べ終えた弁当を畳んでいる。
丁寧で、ゆっくりとした動作。
お嬢様だな…
澪は、何となくその動きを見つめていた。
ムギは包容力があるよな。
騒がしさも静けさも一緒に受け入れられるような。
逆に私は刺激に弱く、周囲がうるさいとすぐ参ってしまう。
彼女には騒ぎやトラブルを楽しむ度量がある。
羨ましい気がした。

澪「ムギ、今度教えてくれないか?」

紬「?何かしら?」

澪「その…周りが騒がしくても平気でいられるにはどうすればいいか、てさ…」

紬「澪ちゃん、そんなことで悩んでたのね。
いいわ、今度の休日にお茶でもしましょう?二人きりで、ね?」




11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:53:53.94 ID:AyBwnMj+0
にちようび!

澪が招待されたのは、紬の家系が経営する喫茶店だった。
文化祭の前にあがり性を直すため、かつてはアルバイトもしたことがある店だ。

紬「今日は全部おごりだから、気にしないで好きなものを頼んでね」

澪「いいのか?悪いな…」

紬「いいのよ、一度クラスメートの相談に乗ってみるの、夢だったの」

そういって紬は、また以前のように柔らかな微笑みを浮かべた。
アンティーク調の店内は、午後の日差しが入り込んで暖かい。

紬「本題に入るわよ。たしか、騒がしいときでも平気でいるにはどうすればいいか?ってことだったわよね」

澪「そうなんだ。特に律と唯の奴が騒ぐと、いっつもついていけなくって…」

紬「簡単だわ。一緒に輪に入って楽しんじゃえばいいのよ」

澪「それ、私にはとても無理…」




14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:55:05.95 ID:AyBwnMj+0
紬「大事なのは慣れよ。少しずつノリに入り込んでいくようにすればいいのよ」
  
人差し指を立て、真顔でそう言った。
しかし。
澪は思った。
天性の性分の問題なのかもしれないと。
あの輪に入って一緒になる自分の姿なんて、とうてい想像できない。
紬は人間としてのキャパシティが広いから、騒がしい中でも平静を保っていられるのだろう。

澪「ダメだ。騒いでるあいつらの輪に入る自分なんてとても想像できないよ。
苦手だ苦手だ苦手だ…」

澪の顔色がどんどん蒼ざめていく。

紬「(この子、こんなに思い悩んでるんだ…)」

紬は考えた。
私にできることは…




16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:55:55.99 ID:AyBwnMj+0
ぎゅ。

澪「!」

紬は、テーブルの上の、澪の手をとっさに取った。
そして両手で優しく握った。

紬「怖がることはないのよ。取って食われるわけじゃない、て言葉があるでしょう?それと同じことよ。
それに、無理して入り込む必要もないと思うの。常にクールでいるのも澪ちゃんの持ち味だと思うわ。」

澪「そうかな…」

紬「うん。私、羨ましいもの。何も喋らなくても、その姿が凛としてて、いつも格好良くて綺麗な澪ちゃんが。それで、自然とファンクラブができちゃうくらいだものね」

澪「ム、ムギだって十分魅力的だと思うぞ。髪綺麗だし、お嬢様だし…」

青くなっていた澪の顔が急激に紅潮を帯びる。
褒められて照れ臭くなったようだ。

紬「ふふ、澪ちゃん可愛い」

澪「そ、そんな真顔で言うなよ」

黒髪を揺らし、顔を真横に振って否定する澪。
素直なしぐさが、とても魅力的だった。




19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:56:48.68 ID:AyBwnMj+0
紬「私、もっと澪ちゃんと仲良くなりたいな。また今度、一緒に遊びましょう?」

澪「あぁ、また時間が取れれば、な」

みおのへや!

また、机に座ってお気に入りのロックナンバーを聞いている。
今日あったことを回想する。
ムギがお茶に誘ってくれて、相談をして、ムギが手を握ってくれて…
あのときの手、暖かかったな…
何も握っていない手のひらを見つめ、ぽわぽわとした感覚に包まれていた一時を思い返していた。
また時間が取れれば、じゃない。
すぐにでも、ムギと二人きりで会いたい。
会って、いつも感情の底に抱えてる思いをもっと吐き出したい。
きっとムギなら、受け止めてくれそうな気がするから。
でも、あまりやりすぎると引かれるか?
いや、それだってわからないじゃないか。
打ち明けてみなければ、世界は答えてくれない。
そうだ、今度は私がムギを誘おう。
澪の心に、わずかだが勇気が芽生えていた。
紬が与えたぬくもりを栄養に生まれた、勇気が。




20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:58:15.68 ID:AyBwnMj+0
じゅぎょうちゅう!

生徒「(ちょんちょん)琴吹さん!」

紬は、横のクラスメートに小声で呼ばれた。
そして、無言で紙を渡された。
筆談だ。
澪ちゃんからだった。

「ムギへ。どこか遊びにいきたいところはあるか」

紬「?」

えぇっと…(サラサラ)

「○○駅にあるテーマパークなんてどうかしら?
行ったことがないけどメルヘンチックで楽しそうなの♪」

はい。
そういって隣の女生徒に渡す。

筆談の返事はすぐに来た。




21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:59:35.66 ID:AyBwnMj+0
「いいぞいいぞ。今週の土曜は空いてるか?」

紬もすぐ返す。

「空いてるわよ」

これだけじゃそっけないわね。
よし。

「空いてるわよ。連れていってくれるの?」

返事が来る。

「うん。この前のお茶のお礼だ」

紬は再度、返信した。

「ありがとう!あそこのテーマパーク、お友達と行くのが夢だったの♪
目いっぱいお洒落していきます!」




22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:00:29.15 ID:AyBwnMj+0
どようび!

待ち合わせは10時に○○駅前だった。
澪は先に到着した。
チェックの入ったグレーのズボンに袖の黒いジャンパー、頭にはキャップ、そしてポーチサイズのバッグというラフな格好だ。
「次の電車で着くから待っててね♪」
紬から来た携帯のメールにはそうあった。
まもなく電車が到着し、駅から出てくる人だかりの中から、紬を探す…
果たして探すまでもなく、彼女はすぐに見つかった。
彼女の格好があまりにも目を見張るものだったからだ。

澪「や、やぁ」

紬「ごきげんよう、澪ちゃん♪」

その膝下まである裾の長いスカートをひらり、と両手に掴み、丁重にお辞儀をする紬。




23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:01:17.82 ID:AyBwnMj+0
澪「ロリータファッションっていうんだよな、そういうの…凄いな」

紬「良かったわ、メイド服って言われなくて(笑)」

紬の格好は、俗にクラシカルロリータと呼ばれる格好だった。
真紅色の別珍であつらえられたワンピースに、白いフリルがいくつも付けられている。
ワンピースの下には白いハイソックスと黒い革靴を履いており、また茶色い革のポシェットを腰に携えていた。
派手さはなく、清楚に着こなしている。
制服姿ですら十分にお嬢様の空気を漂わせる紬は、すでにお嬢様を超えて貴族のオーラを放っていた。

紬「普段親族や来客のパーティに着て行く服なんだけどね。いいの、今日は特別な日だから」

行きましょう。
そういって紬は、澪の真横にくっつく。
どきどきした。




24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:02:07.92 ID:AyBwnMj+0
ムギ、凄く可愛いじゃん…
直視できない。

紬「どうしたの?」

澪「いや、あんまりムギが綺麗だから、さ…」

入場券を買い、テーマパークに入った。
天気は快晴とはいえないが、雲が適度に出ているおかげで柔らかな日光が差している。
絶好のデート日和だな…いやいや、私たちは女同士だぞ?
澪は頭の中に湧いた一言を脳の中の消しゴムで強引に消去した。

紬「まずはあれ乗りましょう!コーヒーカップ!」

澪「お、おい、あれは子供やカップルが乗るものじゃあ…」

紬「いいのいいの、楽しんだもの勝ちよ!」




25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:02:58.57 ID:AyBwnMj+0
コーヒーカップには、並ばずに乗ることができた。

紬「それそれそれ~~~っ!!」

澪「バカ、あんまり回すなっ…」

… …

澪「ふぅ…」

紬「大丈夫?」

澪「いや、私が慣れてなさすぎるのがいけないんだ…」

澪が目を回したようなので、近くのベンチに座ることにした。

澪「落ち着いてきた…ムギは楽しかったか?」

紬「もちろん!」

ぎゅ。
紬に思い切り抱きつかれる。




26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:03:55.34 ID:AyBwnMj+0
紬「ごめんなさいね。ちょっとやりすぎたかしら?」

そして、頭を撫でられた。
ムギの胸元から、ほのかに甘くてとてもいい匂いがする。
くらくらしそうな匂いに、意識が遠のくようだ。

紬「でも、参ったり困ったりしてる澪ちゃんって、可愛い」

澪「…」

紬「私ね、いっつも思ってたの。感情が素直に出ちゃう澪ちゃんって、すごくいい子だな、て」

澪「というか、ムギもずるい。私たち全員の気持ち、いつもことごとく見抜いちゃうじゃないか」

紬「うん、それは自然と身に付けた技術だから仕方ないかもしれないわね。
知り合う人が社長や政治家ばかりだと、どうしても人を見る目を養わないと、うまく渡っていけないから…」

澪「苦労してるんだな、お嬢様も」




27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:04:43.67 ID:AyBwnMj+0
紬「ちょっと自慢みたいでごめんね。でも、だからこそ澪ちゃんみたいに、いつも素直な子が可愛くて仕方ないの。
もちろん軽音部の子はみんな素直だから、みんな大好きよ?」

澪「はは…何だかんだいっていい奴らだもんな」

このとき、澪は悔しく感じた。
今は私のことだけ、可愛いと言ってくれたら一番嬉しいのに…
ちょっと待て。
何だ、この感覚?
ムギに対して、こんな特別な感情あったっけ?

紬「さ、次は何に乗る?バイキング船?メリーゴーランド?」

澪「いや、しばらくこのままでいてほしい」




28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:05:45.60 ID:AyBwnMj+0
え、どうしたんだろう。
今の澪ちゃん、凄くしおらしい。
私に全体重を預けたまま、動かずにいる。
私も、正直ずっとこうしていたい。
澪ちゃんが、私に気持ちを委ねてくれるなら…
自然と、澪を膝枕する姿勢に変わっていた。
まだ午前中なのに…
澪なら周りの視線を気にしそうなものだが、その様子は一向にない。
むしろ、紬の方が気恥ずかしいぐらいだった。
もっと、二人きりの世界に行きたい…
だから、提案した。

紬「ねぇ、観覧車行きましょう?」

澪「うん…」

目線も合わせずに、こくり、と澪はうなずく。




30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:06:39.91 ID:AyBwnMj+0
観覧車にも、ほとんど並ばずに乗ることができた。
ゴンドラは少しずつ高度を上げていき、次第にそのガラス窓に綺麗な街並みを映し出す。

紬「見て!私たちの高校が見えるわ」

澪「あぁ、本当だ」

澪の反応はいまいちだ。
というより、外の景色に目もくれず、ずっと紬の胸元ばかりを見つめている。
まるで、何か思いつめているようだった。

紬「澪ちゃん、何か考えごとでもあるの?」

澪「…やっぱりわかっちゃうんだな、ムギには」

紬「いいのよ、何でも好きに話して。私たち、お友達でしょう?」

澪「うん…ムギにはお礼を言いたいんだ。学校生活、たしかに楽しいけどさ。
なんていうか、私の気持ちはいっつも置いていかれてて、周りがどんどんめまぐるしく変化していって。」

ゴンドラはすでに最上階に来ている。
だけど、景色なんて気にならない。




31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:07:38.23 ID:AyBwnMj+0
澪「そんな時、ムギと話す機会があって、何ていうかさ…凄く癒されたんだ。私の底にある恐怖心とか不安感とか、ムギと話してると全部忘れられるんだ」

紬「繊細さゆえの悩み、よね…でもよかった。澪ちゃんが私に癒しを求めてくれるなら、ちゃんと私にも役割があった、てことだよね」

そう言って、紬はやや自嘲ぎみに、はにかんだ。

澪「役割なんて、そんな些細なものじゃないよ!うまく言えないけど、ムギは今の私にとって…ムギは…」

それぎり、黙り込んでしまう澪。

紬は、再び澪の手を取り、強く握った。

紬「言葉に頼っちゃだめ、自分を追い込んじゃうわ」

澪「なぁムギ…どうしてここまで私のことを…わかってくれるんだよ…」

澪の目に、うっすらと涙が浮かんだ。
紬はポーチからハンカチを取り出し、手渡す。
涙を拭く澪。




33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:08:22.35 ID:AyBwnMj+0
ゴンドラは間もなく乗り場に戻る。
澪の涙を隠すように、そ、と肩を抱きながら観覧車を降りた。
それから、近くにあった傘付きのテーブルに座った。

紬「落ち着いたかしら?」

澪「うん。ごめんな、取り乱してしまって」

紬「いいのよ。楽しいことを進めるよりも、苦しいことを取り除くことのほうが、よっぽど大切だから」

澪「やめろよ、また涙が出ちまう…」

紬「くす、本当に素直ね」

楽しい一日にするつもりが、ムギに迷惑を掛けてしまった…
でも、目の前にムギがいて、優しい言葉を掛けてくれる。
このシチュエーションだけでときめいてしまう。
この気持ちは止められない。
もっとムギに近づきたい、もっとムギと触れ合いたい。
だから…

澪「なぁ、うちに来てくれないか?」




34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:09:07.00 ID:AyBwnMj+0
みおのいえ!

澪「今日は父さんも母さんも出かけてるからな。まぁ、のんびりしていってくれよ」

コーヒーしか出せないけどな。
苦笑いして、澪はコーヒーを持ってきた。
砂糖を多めに入れて、ほろ苦い液体を口に含む。

澪「何だか振り回しちゃってばかりで、本当に悪いな」

紬「ぜんぜんかまわないわ。澪ちゃんが心地よくなってくれるなら」

澪「どこまでも気を遣うんだなぁ…せめて自分のことも気遣ってやれよ」

紬「そんなのいいの。私は今の私のままで、十分幸せだから」

コーヒーカップの残りが半分ほどになり、ぬるま湯に変わりかけたときだった。

澪「ムギ…」




35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:11:24.01 ID:AyBwnMj+0
今度は、澪ちゃんの方から抱きついてきた。

紬「うん…」

紬は何も言わず、そ、と澪の肩を抱いた。

澪「あのな…さっきから変なんだ。ムギと一緒にいると、ずっとドキドキして止まらない」

紬「私のこと…好きなの?」

澪「バ、バカ。そんなにストレートに聞くなよ…」

先日と同じように、澪が再び頬を赤らめる。

紬「本当のところはどうなの?」




38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:12:40.96 ID:AyBwnMj+0
澪「す、好き…だ…凄く好きだ。先週のお茶のときからずっと…ずっとムギの優しさに惹かれてた。
だから…今日は思い切って誘ったんだ…そしたらさ、嬉しかったんだ…
ムギが思いのほか喜んでくれて…だから…」

どぎまぎしながら、淡々と想いを告白する澪。

紬「やっぱりそうなんだ。嬉しい!」

もっと強く、澪を抱き締める。
澪の黒髪が頬にかかる。
柔らかくてシャンプーのいい匂いがした。

紬「私も澪ちゃんのこと大好き。正直に言っちゃう。これはもう、お友達以上の感情よ」

澪「あぁ、私もだ…」

もうここまで来たら止められないわ。
私は澪ちゃんを…手に入れる。
そして絶対に、離さない。

紬「キス…していいかしら?」




39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:13:46.69 ID:xxhIpoIWO
むぎゅううううう




40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:14:13.17 ID:AyBwnMj+0
澪「うん、いいよ…」

紬「目をつぶって…」

澪は、上目遣いでゆっくりと目をつむった。
おそらく、これがお互いの人生のファーストキスだろう。

唇をそ、と押し当てた。
澪ちゃんがびっくりしないように、そ、と。
ちゅ。粘膜の触れ合う高い音が鳴る。
や、柔らかい…




43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:17:41.59 ID:AyBwnMj+0
澪「むぅ、ちゅっ…ふぅ…」

紬「ちゅ、ちゅ…れる…はぁ」

1分ほど、口付けを交し合った。

紬「えへへ、澪ちゃんの初キス、もらっちゃった」

澪「私だって、ムギの初キスもらったぜ」

紬「このことは、二人だけの内緒にしよう。ね?」

澪「もちろんだ。私だって、ムギを独り占めしたいんだからな」

紬「嬉しい。ねぇ、もう一回キスしよう?」

二人だけの甘い時間が、この日、産声を上げた。
彼女たちはしばらくの間密会を重ね、ささやかな愛を育んでいくのだった…

【完】




46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:20:28.07 ID:azX1+DTO0
いい紬澪じゃないか!
読みやすくてよかったし。




47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:21:49.28 ID:xxhIpoIWO
乙!久々にまともなムギちゃんを見た